M男の為のキャットファイト同人誌制作サークル なのはな800系 いただきもの

■犬子vsヨシヒコ

ヨシヒコの「なの女」との出会い。

僕は「なの女」に来る前、大東プロレスという男性プロレス団体に所属していた。
恥ずかしい話、当時から僕がやっている事と、「なの女」に来てからやり始めた事に、それほどの違いはない。
ただ、僕がお仕えする人達が変わっただけだ。
僕の居た大東プロレスは、不景気による興行収入の低下と、設備の維持費で経営難に陥っていた。
何よりも、過去のプロレスの在り方をただ上からなぞったような、大東プロレスの在り方は、観客の人達に受け入れてもらう事ができなかった。

経営が落ち込み、とうとう大東プロレスの所属選手が僕を含めて、残り3人になった時、「なの女」の人達が僕達の団体を訪れた。 大門美香子先輩を筆頭に、如月レイラ先輩、それに蓬田犬子先輩もいた。
当時の「なの女」はまだ旗揚げしたばかりで、確保したい人員に到達していなかった。
そのため、マネージャー業務や雑用係、その他のお世話をする事が出来る男性を探していた。

「私達が求めてるのは、ただの雑用係じゃなくて、ちゃんと男性レスラーとしての資質も備えている人がほしいの。ここにいる貴方達3人にその素質があれば全員雇ってあげるし、試合も出させてあげるわよ。悪い話じゃないでしょう?」
この大門美香子先輩の提案に、大東プロレスの僕の先輩2人はバカにしたように切り返した。
「なんで俺達がお前らの雑用係をやらなきゃいけないんだよ。あのな、女の雑用なんて俺達はやる気はないし、お前らみたいな、訳分からん女の弱小団体と関わりなんて持ちたくないんだよ。」
大門先輩の発言を嘲笑した2人を、如月レイラ先輩が挑発した。
「こんな時代遅れの頭の弱い男が運営してる団体じゃ、どうしようもないわね。おまけに、もうオッサンじゃない。プロレスラーとしての資源である身体も、もう売り物にならないわね。」
「なんだとっ!!!!」
その挑発に乗ってしまった先輩は、今にも如月レイラ先輩を殴りそうであったが、僕と犬子先輩が両者の間に入り、興奮している2人をなだめた。
「貴方はどうしたいのかしら?まだ若いし、この2人とは違って伸びしろもあるでしょうし、雑用のイロハはもう知ってるんでしょ?」緊張した場を切り裂くように、大門先輩が僕に尋ねた。
その場にいる全員の目線が、僕に集まった。

「ぼ・・・ぼくは・・・大東プロレスの選手ですから!他の団体に行く気はありません。」
「そうだ!ヨシヒコ!証明してやれよ。お前らみたいな腑抜けた女団体に興味ないってな!お前の実力なら、ここの女3人なんて余裕で倒せるだろ?」
「ちょっと、先輩!」と僕は制したが、時既に遅し。
「あら、言ってくれるわね。それじゃあ、ボーヤと戦うのはお姉さん達じゃなくて、貴方と同じ歳ぐらいの犬子にお願いしようかしら。」
犬子先輩は、僕の身体をペタペタと触った後、大門先輩の方を振り向いた。
「多分、壊さずにいけると思います♪」そう言った後、犬子先輩は僕の耳元で、
「悪いけど、男の子相手には力の加減が上手く出来ないから、宜しくね。」と囁いた。
僕は大東プロレスの先輩、なの女の先輩が見守る中で、犬子さんとの一騎打ちをさせられる事になった。
「おい!ヨシヒコ。はっきり言うが、女に負けるような奴は、この団体には要らない。もし負けたら、即刻出て行け。」
と大東プロレスの先輩に言われ、僕は身を引き締めた。

しかし、リング上で試合が始まると、犬子先輩の独壇場となった。
幼少期から体系的に柔道を習っている上に、プロレス自体のキャリアも僕よりも全然長い。いくらパワーで跳ね返したり、抑えこもうとしても、綺麗に身体を入れ替えられ、劣勢へと追いやられてしまう。
「こんなんじゃ、何処の団体行っても通用しないですよ?」
ぎゅううううううううううううう!!!!
犬子先輩の首4の字固めが綺麗に極り、僕の意識を奪おうとする。
「あのぉ、オンリーギブアップマッチだったと思うんですけど、落としちゃったりしても大丈夫ですか?」犬子先輩は、技を掛けながら、なの女サイドと、大東プロレスサイドに確認した。
両者とも黙っているだけだった。
「その辺りは、私の裁量って事ですね?それじゃあ、落とします♪」
ぎゅうううううううううううう!!!!

僕は犬子先輩に意識を強制的にシャットダウンさせられた。
そして、次に僕が起こされたのは、リングポストの上だった。
「あれ?もう起きちゃったんですか?この技で起こそうと思ってたんですけどねっ!!」

ドスンッ!!! と激しい痛みが背中を襲った。恐らく、首4の字で絞め落とされた後、リングポストに持って行かれ、そこから落とされる瞬間に意識が回復したのだ。
僕が意識を失ってもなお、この女の子は攻撃する事を辞めないのだと、僕の全細胞が感知した時、僕の口から思わず、ギブアップという言葉を発しそうになった。
しかし、リング外で僕の試合を見ている大東プロレスの2人の先輩の姿が目に止まり、僕は何とかその一言を発せずに済んだ。 無一文で上京してきた僕を受け入れてくれた先輩達、覚えの悪い僕のために居残って練習に付き合ってくれた先輩達、苦しい経営状態でも、僕の給与だけは何とか捻出してくれた先輩達。
普段は気がつくことのない、大東プロレスを支える先輩達への感謝が、恐怖と対峙する大きな原動力になった。
僕は絶対に負けない。僕は自分の中から無尽蔵に現れる確かな力をその時に感じた。
_______

犬子先輩と戦い始めてから、既に2時間以上が経過していた。
僕はボロ雑巾のようになりながらも、決してギブアップはしなかった。あれから、犬子先輩は格闘スタイルを変幻自在に変えた。 柔道スタイルで投技を中心にしたものから、柔術などの関節技や絞め技に移行し、僕を散々絞め落とした後、空手やシュートボクシングのようなスタイルで、僕の全身を満遍なく殴打した。 犬子先輩のリングコスチュームは、僕の返り血や、涎や、涙で、目で確認できるはっきりとした汚れとして目立ち始めた。
「これ以上やると殺しちゃうかもしれないなぁ・・・」
そう犬子先輩が呟いた時、大東プロレスの先輩がリングにタオルを投げ込んだ。
「もう勘弁してやってくれ、ヨシヒコの負けだ。」
「せ・・先輩!僕はまだやれますよ!やらせてください!」
僕はリング上から、大東プロレスの先輩達に呼びかけたがダメだった。
「大東プロレスにお前の居場所はもうない。」
大東プロレスの先輩達のこの一言が、トドメとなり、僕はその場で意識を失った。

 ミックスファト

______後日談

気を失った僕は、「なの女」に連れて行かれ、犬子先輩によって手当を受けた。
僕は大東プロレスに戻ることを希望したが、僕はもう「なの女の一員なのだ」と大門先輩に強く止められた。
しかし、僕の「なの女」への移籍は、予め仕組まれていたものだった。
大門先輩と大東プロレスは昔から付き合いがあり、経営困難になっていた大東プロレス側が、「なの女」で僕を雇ってほしいと願い出ていたのだ。 ただ、「なの女」側も手放しで僕を受け入れるのではなく、面接や面談を通して、僕の組織への帰属意識を測りたかったのだそうだ。それがあの試合だったらしい。
僕が「なの女」に移籍してから、しばらくして大東プロレスは潰れた。先輩達は路頭に迷う事無く、それぞれの道を歩んでいる。
一番の若手の僕を養い、育てていく体力がもう自分達にはもうないと判断した先輩達は、僕が憧れている一流プロレスラーの夢を諦めさせないために、僕を「なの女」へと移籍させたのだそうだ。
この後日談は、犬子先輩から教えられた。しかし、そのような裏話があった事を僕は知らないふりをしているし、大門先輩にも、如月先輩にもその件について一切話しをしていない。
ただある時、大門先輩がふと僕に言ったことがある。
「男って、面倒くさいよね。でも、そういう面倒くささ、私は嫌いじゃないんだよね。」
その時の大門先輩の目には、今はなき大東プロレスへの、確かな尊敬の目が垣間見えた。
だから僕は、「なの女」に着いていくのだと思う。

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